『10週間で立ち上げるEコマースビジネス』の第3回目の記事になりました。
当記事(10回シリーズ)は、以下の悩みを解決できるような内容になっています。
- 起業・副業してみたい、起業アイデアを実践してみたい
- Eコマースビジネスを始めたいが、どんな優先順位で、何を学べばいい?
- カスタマーリサーチや調達・フルフィルメント・プライシングについて知りたい
前回の記事(第2回目)では『顧客ニーズ』と、『顧客に提供する価値』 = Value Propositionsを解説し、ビジネスアイデアを5つから3つに絞りました。
シリーズ1回目から記事を読みたい方は、【MBA流】10週間で立ち上げるEコマースビジネス – Week1 をご確認下さい。
シリーズ3回目の今回はEコマースにおける『カスタマーリサーチ』と『調達、フルフィルメント、プライシング』について解説します。
この記事を読み終えることで、『カスタマーリサーチ』や『調達、フルフィルメント』の重要なポイントが理解できるだけでなく、実践を通して『プライシング』や『損益分岐点』の考え方が身に付いた状態になります。
10週間のおおまかなスケジュール
当記事(10回シリーズ)のスケジュールですが、以下の通りになります。
Week 1: イントロ & ビジネスアイデアを生み出す
Week 2: 顧客ニーズ、製品、顧客に提供する価値
Week 3: カスタマーリサーチ、調達とフルフィルメント、プライシング(← 今週はここです!)
Week 4: チームと役割、アイデアとストーリー
Week 5: ブランディング、マーケットプレイス、Eコマースストアデザイン
Week 6: ストアデザイン(続き)、ブランドアイデンティティ―
Week 7: ユーザーテスト
Week 8: SEO、ソーシャルメディアの活用、コンテンツマーケティング準備
Week 9: コンテンツマーケティング実践
Week 10: ビジネスの最適化 & リターゲティング
今週も張り切っていきましょう!
カスタマーリサーチはなぜ必要か?
ビジネス立上げの初期段階で “カスタマーリサーチ” は最も重要と言われています。
“お客さま” を知ること、つまりカスタマーリサーチはなぜ重要なのでしょうか?
それは、全ての新しいビジネスアイデアは『たくさんの仮説』の上に成り立っているからです。
【カスタマーリサーチはなぜ重要か?】
✅全てのビジネスアイデアは『たくさんの仮説』の上に成り立っている
✅ その検証するのに最も有効なのが『顧客と話すこと』
✅ 起業家はビジネスリスクを『見てみないふり』をしてしまう傾向がある
✅製品・サービス開発にコストをかける前に軌道修正できる— Yutaro@ MBA×Eコマース×ビジネス (@yusaku_nakamura) June 1, 2021
仮説を検証するにはお客さまと話すことが最も重要になります。
起業家は自分の製品にこだわりがあり過ぎて、ビジネスリスクを『見てみないふり』をしてしまう傾向が高いと言われています。
ニーズのない製品の開発にコストを掛けてしまう前に、軌道修正できるのがカスタマーリサーチの利点です。
なお、この章に書かれている内容の一部は、Giff Constable著の『Talking to Humans』を私が意訳、サマリーしたものです。
興味のある方は、原著もしくは彼のブログ『12 Tips for Early Customer Development Interviews』をご覧ください。
プライマリ・リサーチ
カスタマーリサーチで顧客と話す際に最も大切なことは、『商品を売ること』ではなく、『学ぶこと』です。
では具体的にどのようにカスタマーリサーチをするのでしょうか?
プライマリ・リサーチとは、実際にお店を訪問したり、カスタマー候補者と直接会って以下のアクションをとることです。
- 顧客の立場で考える
- 顧客を観察する
- 顧客にインタビューする
以下にプライマリ・リサーチする際のポイントを挙げておきます。
• カスタマーリサーチの目的は、顧客、パートナー、または市場について、より深い洞察を得ること、つまり『学ぶこと』
• 誰から学ぶかを明確にする(通常はあなたが思い描く典型的な顧客やアーリーアダプター)
• 顧客から何を学ぶかを明確にする
• 『リスクの高い仮説』から優先的に検証する
• インタビューガイドを準備する
• 指標を計算できるよう良いノートを取る(特にリスクの高い仮説について)
• 結果をチームで検証する
上記を十分に準備してから顧客と話し始めましょう。
カスタマーリサーチについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみて下さい。
セカンダリ・リサーチ
セカンダリ・リサーチは直接カスタマーと話す以外の方法で顧客や市場について学ぶことです。
以下が主なセカンダリ・リサーチになります。
- Google Trends(グーグルトレンド)で関連するキーワードを調べる
- 競合製品のレビューを調べる
- ソーシャルメディアで競合製品に関するカスタマーのコメントを調べる
上記をおこなった後に商品のコアベネフィット、有形価値、無形価値を改めて要約し、Value propositionを推敲しましょう。
Value propositionsについては前回の記事【MBA流】10週間で立ち上げるEコマースビジネス -Week2をご覧ください。
調達とフルフィルメント
Eコマースビジネスにおいて重要であり、かつ見落とされがちなのが『調達』および『フルフィルメント』です。
この章ではそれぞれ調達とフルフィルメントの基本事項を説明します。
(以下に紹介する例は、全て物品を売る場合の調達例になります)
調達
具体的にEコマースの調達先を探す場合はどうすれば良いでしょうか?
様々な方法がありますが、ここでは1例としてオンラインでサプライヤーを探す方法を紹介します。
サプライヤーを決める
以下が代表的なオンラインサプライヤーになります。
- Alibaba.com: 中国を拠点とする世界最大のサプライヤーマーケットプレイスです
- Ebay.com: アメリカのEC企業。しばしば卸価格の商品を見つけることができます
- GlobalSources.com: 香港を拠点とするEC企業。Alibabaより取扱いサプライヤーは少ないが、品質は良い傾向にある
特にAlibaba.comは世界最大規模のオンラインサプライヤーマーケットプレイスです。
サイトはグローバル版(英語)と日本語版があり、様々な商品の取り扱いがあります。
注文数は1,000~ですが、『アリエクスプレス』を使えば小ロットでも調達可能になります。
使い方は、例えばGoogleで『Alibaba.com 使い方』と検索するとたくさん出てきますので参考にしてみて下さい。
クオリティ・1品当たりのコスト・最低注文数を確認する
これら3点はあなたがEコマースで商品を売る際に大切なポイントです。
特に商品の ”クオリティ” = 品質 が担保できていなければ、仮に商品が売れても返品やクレームの原因になってしまうでしょう。
購入する前にレビューを確認するなどして、十分に品質を確認するようにしましょう。
レビューはサイト上のものだけではなく、『サプライヤー名』でGoogle検索してみましょう。
実際の住所、Emailアドレス、電話番号、第3者のブログポスト等を通して評判も合わせて確認すると良いでしょう。
調達もアイデア次第
ここで紹介してきた調達方法はごく1例です。
第1週目で話した『アイデアを考える際の6つのポイント』等も参考にしつつ、調達を考えてみて下さい。
ちなみに私は『地域の特異性、調達元の特異性』を生かして、アメリカで商品を複数調達し、商品に『ストーリー』を加え、オリジナルの『バンドル製品』とすることでEコマースを立上げました。
是非ここでもあなたのオリジナル性を生かしたアイデアを取り入れましょう。
フルフィルメント
フルフィルメントとは何でしょうか?
カスタマーがあなたの商品に対して代金を払った後、『どうやって商品をお客様のもとに届けるか』がフルフィルメントになります。
主にフルフィルメントには以下の3パターンがあります。
ドロップシッピング
あなたがネットショップで販売をした後、メーカーや卸売業者、サプライヤーが商品を直接お客様に配送代行してくれるものです。
『Aliexpress(アリエクスプレス)』や『Oberlo』、日本では『NETSEA(ネッシー)』や『TopSeller』等がこれに当たります。
在庫を抱えるリスクがなく、初心者は手軽にネットショップ運営始められる一方で、利幅が低い、自分でコントロールできる範囲が少ない等のダウンサイドもあります。
ドロップシッピングの仕組みと始め方の手順を下記にまとめましたので、興味のある方はどうぞ。
Third-party フルフィルメント(3PL)
このオプションはドロップシッピングと似ていますが、違いは『あなた自身がサプライヤーにオーダーした在庫をThird-party 倉庫に送る』というところです。
在庫はThird party 倉庫に保管してもらい、配送までを委託します。
『Amazon FBA』がこれに当たります。
ドロップシッピングとほぼ同様にシンプルですが、あなたが一度在庫を受け取り、オーダーを検品することができます。
詳細はGoogleで『Amazon FBA 使い方』と検索してみましょう。
In-house フルフィルメント
3つの選択肢のうち最も自由度の高い方法です。
あなた自身がサプライヤーにオーダーした商品を受け取り、自分でパッケージを用意して梱包し、発送までおこないます。
シンプルで100%自分がコントロールできる、マージンを最大化できる等のメリットがありますが、自分で梱包する時間と労力や、在庫を保管するスペースが必要になります。
プライシング
調達とフルフィルメントが決まれば、コストをより詳細に見積もることができるようになります。
ここでは、プライシングとコスト、およびブレークイーブンの基本を解説します。
コスト
最初にコストについて解説します。
大きく分けると”変動費”と”固定費”があります。
変動費
あなたの商品を ”1個売るため” に必要なコストはいくらでしょうか?
あなたの商品が物品であった場合、以下のものが”1個売るためのコスト” = “変動費”になります。
- 商品1個あたりの原価
- 商品1個あたりのフルフィルメント費用/配送費
- 商品1個あたりのマーケットプレイス手数料(アマゾンやShopifyなどを通して商品を売った場合)
- 想定返品コスト
これらを全て合計したものが変動費です。
難しく考えなくても大丈夫です。
『製品を1個売るごとに増加するコスト』と考えましょう。
例えばダイソーで買ってきた弁当箱を、アマゾンで売るとします。(数字は大まかな近似値です)
返品はないと仮定した場合、
原価: 100円
配送費: 370円(レターパックライト – 日本郵便)
アマゾン手数料: 100円
変動費 = 100 + 370 + 100 = 570円
となります。
仮に価格を600円とした場合、
1個あたり利益 = 600円 – 570円 = 30円
ですね。
固定費
次に、仮に商品が売れなくてもかかってしまうコスト(固定費)を洗い出しましょう。
- 広告費
- 人件費
- マーケットプレイス手数料(アマゾン等の手数料が月額一定の場合)
- 倉庫保管費
等が固定費になります。
仮に上記の弁当箱を売るためにかかった広告費が1,000円としましょう。
総コストは、変動費+固定費 = 570円 + 1,000円 = 1,570円となります。
プライシング
『プライシング』は非常に奥が深い学問です。
ここでは簡単にプライシングのアプローチについて触れる程度にしますが、機会があれば深く解説したいと思います。
プライシングの基本的なアプローチ
プライシングには主に以下の4つのアプローチがあります。
- バリュープライシング(顧客の『支払い意欲』に沿って価格をセットする)
- 競合ベンチマーキング(最も近い競合の価格を基準に価格を決める)
- コストベース・プライシング(掛かった変動費を積み上げ、そこに利益をのせて価格を決める)
- オークション等
日本では『コストベース』と『競合ベンチマーキング』で価格を決めている大企業が6割以上です。
一方で、あなたの商品が競合商品と比べて十分に差別化されている場合、『バリュープライシング』による価格決定をするとより効果的です。
バリュープライシングについては次回少し詳細に触れますので、興味のある方はWeek4を参照してみて下さい。
ブレークイーブン = “損益分岐点” を決める
コストと価格が決まったら、最後に『ブレークイーブン・ポイント』 = “損益分岐点” を決めましょう。
ブレークイーブン・ポイント(損益分岐点)とは、かかった費用をすべて回収するために商品を “何個売る必要があるか” ということです。
利益 = 販売個数 × (価格 – 変動費) – 固定費
という式を利用します。
フレークイーブン・ポイント(損益分岐点)は ”利益 = 0” となる 販売個数を求めましょう。
再度、上記の弁当箱の例で解説します。
0 = 販売個数 × (600円 – 570円) – 1,000円
よって、ブレークイーブン・ポイントは、販売個数 = 33.3個です。
つまり、弁当箱を34個以上売らないと変動費や固定費にかかった費用すべてを回収できないということです。
【実践】ビジネスアイデアを2つに絞ろう
ここまで『カスタマーリサーチ』、『調達とフルフィルメント』、『プライシング』について解説してきました。
それでは今週も早速実践です。
【実践】前回3つのビジネスアイデアに絞り込んだものを更に2つに絞りましょう。
前回から更にビジネスアイデアを絞り込みましょう。
具体的には、以下の5点を書き出して、1アイデアを1ページに収めてください。
- 全てのコスト(変動費・固定費)を書き出しましょう
- 価格を設定し、ブレークイーブン・ポイントを決めましょう
- 1,2を決めるために設定した”仮定”があれば書き留めておきましょう
- あなたのビジネスプランにおける不確定要素、リスクを書き出しましょう
- カスタマーリサーチ(プライマリ・リサーチ)をおこない、学んだことを書き出しましょう
いよいよ来週はアイデアを1つに絞り込み、ビジネスアイデアとして決定します!
次回第4週目は
『チームと役割、アイデアとストーリー』がテーマです。以下の記事をご参照ください。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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