こんにちは、ゆうたろうです。
海外のビジネススクールには様々な国から学生が学びにきています。
特にアメリカでは『international学生比率』等を指標にして、クラスのダイバーシティがどれくらいあるかを公開しています。
これはMBAの目的の一つが、『様々な文化背景・バックグラウンドを持つ学生と協力し、一つの課題に取り組む』ことで、グローバルで通用するコミュニケーション力、チームワークとリーダーシップを育てるというねらいがあるからです。
今回は、そのようなダイバーシティ豊かな環境で学ぶ際、コミュニケーションにおいてどのような点に留意すべきか、ハイコン、ローコンとは何かについても触れながら、MBAにおける異文化コミュニケーションを紹介していきたいと思います。
MBA入学決まったけど、何を準備すべきだろう?実際のMBAでのクラスメイトとのコミュニケーションはどのようなものか?MBAで感じる文化とコミュニケーションの違いとは?等の疑問を持っている方は、入学前のイメージを膨らませて頂ければ幸いです。
受験生の方も、勉強の合間に気分転換に読んで頂ければと思います。
ハイコン、ローコンとは?
グローバル環境に身を置いた方はすでに聞いたことがあるかもしれません。
ハイコン、ローコンとはそれぞれ、ハイコンテクスト、ローコンテクストの略称です。
一般に、ローコンテクスト文化に所属している人々は、シンプルで、明快で、曖昧さがないコミュニケーションの取り方をします。メッセージは額面通りに伝え、受け取られます。コミュニケーションを明確にするために、繰り返し同じことを何回も伝えます。
大きく分けるとアメリカやヨーロッパはローコンテクスト文化圏と言われています。
一方でハイコンテクスト文化圏出身の人々は、共通点や暗黙の了解があることを前提としてコミュニケーションを取ります。メッセージは行間で伝えられることが多く、はっきりと口にすることは少ないです。
いわゆる、『空気を読む』というコミュニケーションスタイルがこれに当たります。
日本やインド、中国などがハイコンテクストの代表的文化圏です。
私の実体験(大切なことは2回以上言う)
MBAが始まり、スタディグループ(授業の課題を協力して解くため、3~4人のチームで編成される)での議論が始まると、多くの日本人は早速この問題にぶつかります。
議論が分かれた場合、『私はどう思うか』をしっかりと意思表示し、理由をシンプルに、かつ論理的に答えられると良いでしょう。
チームで議論を進めるためには必須の行為ですし、明快にコミュニケーションできる人はクラスメイトからも信頼されます。
ここはMBA前でも仕事や日常のコミュニケーションで意識して鍛えておくと良いと思います。
スケジューリングでも気を付けておくべきことがあります。
MBA生(特に1年目)は毎日非常に忙しいため、チームのスケジューリングも4人全て都合が良い時間が見いだせないときもあります。
私は、あるスタディグループでのミーティングが他の打ち合わせと被っていたため、『来週の打ち合わせは欠席するよ』と伝えていたつもりだったのですが、議論の中できちんと伝わっていなかったようです。
翌週のミーティングの時間にスタディグループのメンバー1人から電話が掛かってきて、『今日ミーティングだけど来られないの?』と聞かれました。
私は伝えたつもりでしたが、伝わっていなかったのです。
大切なミーティングやメッセージなどは、意識してリマインドする、何回も繰り返して確認するなど、日本にいるとき以上に丁寧にコミュニケーションするべきと思いました。
各国の傾向
個人差は多分にありますが、自分が生まれ育った国や文化圏によってハイコン、ローコンの傾向は異なります。
INSEADの組織行動学が専門の教授エリン・メイヤー氏によると、アメリカが世界で最もローコンテクストな国と言われており、カナダ、オーストラリア、オランダと続きます。
アングロサクソン文化の国々は、全てローコン寄りに位置していますが、同じアングロサクソン系の中ではイギリスは最もハイコン寄りの文化となっています。
一方で、アジアの国々の多くはハイコンに位置していますが、中でも日本は世界で最もハイコンテクスト(!)文化なのです。
つまり、生粋の日本人がアメリカのビジネススクールに入学し、ネイティブのアメリカ人とコミュニケーションする場合、最もハイコンと最もローコンの文化圏の出身者がコミュニケーションすることになります笑。
そしてもっと大切なことは、私のクラスメイトにこのハイコン、ローコンの話をしましたが、ほとんどのクラスメイトはこの文化背景を認識していませんでした。
ハイコンテクスト、ローコンテクストという単語も知りません。
つまり日本人としては、丁寧すぎるくらいに明快でシンプルなコミュニケーションを取ることが、お互いの齟齬を無くすために必要になってきます。
逆に言うと、私たち日本人のコミュニケーションの仕方を例にとって、将来自分がリーダーになった際には ”グローバルでのコミュニケーションの取り方” に気をつけなければならないよと話してあげると、多くのクラスメイトに非常に喜ばれます。
同じMBA生である彼らの多くは、将来グローバルリーダーとなることを目指しているのですから。
あくまで評価は相対的
一点気をつけなければならないことがあります。
前項で例を挙げて紹介したハイコン、ローコンですが、生まれ育った国や文化圏による違いはあくまでも相対的な評価であり、絶対的な尺度ではないということです。
そして、国ごとに大まかな傾向はありますが、同じ国の中でも個人の差に幅がある、ということです。
私のMBAのクラスメイトにインド出身のクラスメイトが何人かいますが、彼らの中でもはっきりと伝えたいことを伝える『ローコン』寄りの人もいますし、日本人に近い空気を読む『ハイコン』寄りの人ももちろんいます。
つまり、”文化” と ”個人の性格” の両方が大切ということです。
文化圏による様々な相違
大切なのでもう一度言います笑。
”文化” と ”個人の性格” の両方が大切ということを前提とした上で、他にどのような違いがあるのかを紹介します。
スケジューリングに対する認識
スケジュールは締め切りが重要で、柔軟性ではなくスケジュール通りに一つずつ進むことが重要と考えるのは、ドイツ、日本、スイス、デンマーク、スウェーデン等の文化圏です。
一方で柔軟な時間の捉え方を重要視し、スケジュールの順応性や柔軟性を大切にするのはインド、サウジアラビア、ブラジル、メキシコ、中国等の文化圏になります。
決断における認識
トップダウンの決断や個人で下される決断を好むのは中国、インド、ロシア等の文化圏です。
一方で、決断において合意形式、全員の同意が好まれるのは日本、スウェーデン、オランダ等の国々になります。
評価における認識
ネガティブなフィードバックをおこなう際、直接的に伝えるのはイスラエル、ロシア、オランダ、ドイツ、フランス等の文化圏です。
逆にネガティブフィードバックを間接的に伝えようとするのは日本、対、中国、サウジアラビア、インド等の文化圏に多く見られます。
見解の相違に対する認識
見解の相違が起きた際、チームや組織にとってポジティブなものだと捉え、表立って対立することに抵抗がない、お互いの関係にネガティブな影響は与えない、と考えるのは、イスラエル、フランス、ドイツ、ロシア、オランダ等の文化圏になります。
一方で対立回避型の国は、見解の相違はチームにとってネガティブであると考えます。対立は問題で、関係にネガティブな影響を与えると考えるのは日本、タイ、インドネシア等の国々になります。
上記のように少しの例を挙げただけでも、文化圏による違いは興味深いと感じるのではないでしょうか?
コミュニケーションをする上で大切なのは、これらの国や文化圏の認識の違いを考慮にいれつつ、個人の性格も加味した上で、場面に応じて最適なコミュニケーションの方法を選択していくことだと思います。
(非常に難しいですが笑)
この記事に興味を持たれてもっと詳しく知りたい方は、
エリン・メイヤー著の『Culture Map』を読むことをお勧めします。
今回はビジネススクールにおける異文化コミュニケーションの実態を、私の体験も交えて書かせて頂きました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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