こんにちは、ゆうたろうです。
MBA留学を目指す多くの方が持たれている関心事の1つは、MBA後のキャリアだと思います。
特に私費留学の場合、一旦退職して留学する方が大半ですし、お金と時間もそれなりに投資しますので、MBA取得後のキャリアアップはマスト事項だと思います。
しかしながら、以下の疑問にシンプルに答えている情報サイトは意外と少ないのではないでしょうか?
- 日本人がMBA後に取り得るキャリアの選択肢は?
- MBA後の就職の現状は?
- 日本人MBAホルダーの就職率、就職先、年収などの情報はどうやって調べる?
- なぜ人によってMBA後のキャリアの明暗が分かれるの?
そこで今回は、私のMBA実体験とMBAコミュニティのネットワークから、上記の疑問への回答および、MBA取得後のキャリアアップについての考察をお伝えしようと思います。
MBA留学を目指されている方にとって少しでも参考になれば幸いです。
はじめに -MBA後のキャリアについて-
皆さん、MBA後のキャリアにはどのようなイメージをお持ちですか?
Goldman Sachsなどの投資銀行、McKinseyなどの戦略コンサルティングファーム、Private EquityやVenture Capitalなど華々しい高収入のキャリアを歩むイメージでしょうか?
私はこれまで約1年半、アメリカでMBAを学ぶ傍ら、スタートアップの活動や現地企業でのインターンシップなど様々なことを経験してきました。
冒頭から少々ショッキングな話ですが、同じ2年間のMBA留学を過ごしてきても、私の周りを見ているとMBAでの成長度合いや卒業後のキャリアには既に差が出てきています。
希望のキャリアゴールに向けて着々と歩み始めた人、キャリアチェンジに成功した人、まだ就職先さえ決まっていない人、などです。
せっかく多額のお金と時間を費やしてMBAを学ぶのであれば、2年間の機会を最大限活用したいと誰もが思うはずです。
ではなぜこのような差が生まれてくるのでしょうか?
この記事の後半『MBA後のキャリア、なぜ明暗分かれる?』で、私の経験やクラスメイトの共通点を考えた結果、3つの突き詰めるべきポイントを紹介します。
まずはじめに、MBA後に取り得る一般的なキャリアパスについて紹介していきます。
MBA後に取り得るキャリアの選択肢は?
1. 一般的なキャリアパス
まずはMBA後に選択し得るキャリアについて、業界別に紹介していきたいと思います。
それぞれのキャリアパスの概要やメリット・デメリットについても記載しました。想定年収は業界、職種、年齢やポジションで大きく変わりますのであくまでも目安の1つと考えて下さい。
コンサルティング系(想定年収:700万円~1500万円)
こちらはMBA後のキャリアの王道の1つですね。
McKinseyやBoston Consulting Groupをはじめ、AT Kearney、Bain & Companyなど代表的な戦略コンサルティングファームは毎年5~6月頃にMBA合格者向けに壮行会を実施しています。
コンサルを志望する場合、ここで選考の流れや仕事のイメージを理解すると共に、社員とのネットワークを作っておくと良いでしょう。
通常の採用までの流れは、夏休みに各社が募集するSummer Internshipの選考を突破し、良いパフォーマンスを残した上でフルタイムのオファーを獲得することです。
各専攻ではコンサルタントとしての素養を必ず見られますので、しっかりと対策をとることが肝心です。
コンサルティングファームで働くことのメリットは、1社にとらわれず様々な業界の企業、課題解決の経験が積めることです。そして恐らく収入面では最も良い選択肢の1つかもしれません。
一方でデメリットとしては、ワークライフバランスや安定性という面では妥協をしないといけないでしょう。
また、コンサルタントという職業柄、提案だけで終わってしまうことも多く、実際に意思決定や実行に関わることはあまりないため、人によっては物足りなさを感じてしまうかもしれません。
金融系(想定年収:700万円~1300万円)
投資銀行やプライベートエクイティなどもMBA後のキャリアパスとして見られます。
MBAという資格は少し特殊で、他の実務的なスキルを養う資格とは大きく違います。
社会人経験があることを前提とした上で、実務レベルのスキルに加えて経営における論理的思考能力を養うスキルです。
よって、これら金融系へ転職するMBA取得者は、エキスパートとしてのスキルを要求され、採用されるポジションに見合った実務能力を即戦力として発揮することが求められるでしょう。
なお、投資銀行もコンサル系同様に『MBA壮行会』を開催するが、壮行会という名の1次選考の可能性が高く、ここについては留学生ネットワークを使って事前情報を収集しておくことをお勧めします。
事業会社系(想定年収:500万円~1000万円)
カテゴリーとして最も大きいのが事業会社への就職でしょう。
一口に事業会社と言っても様々で、メーカー、IT、メディア、商社、小売、インフラなど多岐に渡ります。
MBA取得後、事業会社の経営戦略やFP&A(Financial Planning & Analysis, 日系企業では戦略財務・経理などとも言います)で働くことは、MBAで学んだことを事業会社側で活かすという意味で良い選択肢だと思います。
実際に私と同期の2020年MBA卒のキャリアパスとしても事業会社就職が最も多いのではないかという印象です。
事業会社を選択することのメリットの1つとしては、『戦略』から『実行』まで自分ごととして関わっていくことができるという点でしょう。
一方で、長い歴史を持つ事業会社の場合、その会社特有のルールや文化がある場合が多く、合理性やフラットな組織で働きたいという方にとっては少し窮屈に感じてしまうかもしれません。
その会社のカルチャーがどのようなものか、事前にHiring Managerや関連部署の社員と実際に会って話してみたりして情報を収集しておくと良いでしょう。
起業
こちらもMBAホルダーによくあるキャリアパスです。
これは、MBAを取ったから起業するのではなく、起業という目的が最初にある人がMBAを手段として取る場合が多いです。
MBAで学んだ経営全般の知識は当然起業に役立ちますし、MBAの過程で広げたネットワークもビジネスに大いに役立つでしょう。
海外MBAスクールであればBabsonやUC San Diegoなど、アントレプレナーシップに特化・強みを持っているスクールもあります。
一方で、『起業』を選択肢として考えるのであれば、本当にそのビジネスをやり抜く覚悟があるのか、寝食を忘れて打ち込める情熱があるのか、という点が最も大切だと思います。
リスクを取ってもやり抜ける情熱が最も重要なファクターとなるでしょう。
2. 2020年卒の就職状況
2020年は全世界レベルでCOVID-19の影響が広がり、MBA卒業後の就職状況にも影響が出ています。
GE 、Johnson and JohnsonやUberなど大手企業やメガベンチャ―に限らずMBA採用を一時凍結している企業もあります。(2020年5月現在)
一方で、このような状況でも積極的に採用している企業があります。
その1つとして挙げられるのがAmazon、楽天、ファーストリテイリングなどのTech系の企業です。(ファーストリテイリングは情報製造小売業に変化中)
ECビジネスはCOVID-19の影響後も伸び続けており、特にAmazonでは需要増に対応して従業員を新たに7.5万人雇用すると発表しています。(2020年4月)
つまり、2022年現在、積極採用している企業はそれだけ企業体力があると言えます。
このような情報はリクナビエージェントなど保有求人数や転職支援実績が業界最大規模の転職エージェントや、MBAの転職専門のアクシアム等に登録・面談することで最新の状況が分かりますので、参考にしてみるのも良いかと思います。
3. 現地に残るか?帰国してキャリアを築くか?
別の視点でMBA後のキャリアを考えた場合、就学先の現地に残るか、日本に帰国してキャリアを築くかの選択肢があるかと思います。
当然、現地に残る選択肢の方が難易度は上がります。
一般的に転職する際、『地域』『業界』『職種』の3つの要素のうちどれを変えるかを考えますが、通常は1つだけ変えて残りの2つは固定するのがセオリーです。
MBAを取得することで、場合によっては2つの要素を変えて転職することも可能、と言われています。(あくまで一般論ですので、もちろんその人の持つスキルセットや専門性によります)
結論から言うと、現地に残って就職する場合、『地域』『業界』『職種』の3つの要素うち、既に『地域』を変えることになるので、自分がこれまでに経験のある『業界』と『職種』の最低どちらか1つ、もしくは両方を固定すべきと考えましょう。
私の場合、『地域』と『業界』を変えて、『職種』を固定しました。
アメリカのバイオテック企業から正式にオファーを頂いたのですが、これは私のサプライチェーンの専門性とスキル = 『職種』 がまさに企業側のニーズとマッチした結果だと考えています。
このあたりの情報は私の以前の記事にも書いていますので、宜しければ参考にしてみて下さい。
MBA後の就職状況はどうやって調べる?
一般的なMBA後のキャリアが分かったところで、直近のMBA卒業後の就職状況はどうなのか?その調べ方を紹介します。
1. 各MBAスクールが出しているEmployment Reportを利用する
自分の目指しているMBAスクールの卒業生のキャリアを調べたい場合は有効です。
ただし、卒業生全員のキャリアのデータとなりますので、日本人以外のデータが多く含まれます。
調べ方:Googleで『ビジネススクール名 + mba + careers』等で検索
上記で検索すると、各大学が公開しているEmployment Reportがヒットするはずです。
大学によっては卒業年次ごとのデータを公開しているので、当時の景気等の影響を踏まえたデータとしても参考になるでしょう。
以下の例は『Stanford business school + mba + careers』で検索した場合です。
>Employment Reports | Stanford Graduate School of Business
2. ファイナンシャルタイムズのMBAランキングを利用する
卒業後3年後の年収、給与上昇率、就職率等に関してはファイナンシャルタイムズのMBAランキングで確認することができます。
こちらは全世界から集まってくるMBA生の集約データなのでかなり大雑把はデータになりますが、ビジネススクールごとの概要情報は得られると思います。
>Global MBA Ranking 2020 – FT Business School Rankings
3. Linkedinを利用する
MBAスクールではLinkedinを必ずアップデートするように言われます。
日本人MBAホルダーの就職先や職業を調べたい場合は、Linkedinに多くの方がご自身のレジュメを記載しているので、ビジネススクール名で検索してみると良いでしょう。
他にも、各MBAスクールの日本人Websiteやネットワークを通じて、卒業生のキャリアについて質問してみても良いと思います。
MBAホルダーの皆さんはネットワークの大切さを理解しておりますので、積極的に協力してくれると思います。
MBA後のキャリア、なぜ明暗分かれる?
これまでにMBA後のキャリアパスや就職状況の調べ方を紹介してきました。
特に私費で留学を考えている方にとっては、アメリカのフルタイムMBAであれば2年間という時間の投資と、その間の収入が止まり尚且つ高額の授業料も発生していることから、キャリアアップと転職の際の金銭面を含む条件は最も気になる部分だと思います。
冒頭でも紹介しましたが、私の周りを見てみると、同じ2年間のMBA生活を過ごしてきても『希望通りのキャリアを歩み始めた人』、『それなりの条件で現状維持の人』、『残念な結果になっている人』など、早くも分かれてきています。
この差は一体どこから来るのでしょうか?
私は自分の経験と、周りで私費留学していたクラスメイトの共通点を考えた結果、以下の3つを突き詰めるべきという考えに至っています。
- 留学前に自分のキャリゴール(North Star)を描く
- 留学中にMBAのゴールデンタイムを意識し、行動する
- 留学後、最初の職場で期待値と責任を意識し、結果を出すことを覚悟する
順番に解説していきます。
1. 留学前に自分のキャリゴール(North Star)を描く
3つのうち最も大切なことが ”自分のキャリアゴール”を描くことだと思います。
これは、ビジネススクール向けのエッセイに書くLong-term Goalではありません。
人生の中であなたが本当に心の底から成し遂げたいと思っている『人生のキャリアゴール』のことです。
アメリカではこれを『North Star』と呼ぶこともあります。(文字通り、暗い夜でも進む方向を間違わないための北極星のような目印ですね)
これがないと、次に述べる『MBA留学中のゴールデンタイム』での活動が一貫したものにならず、焦点を欠いた2年間になってしまいます。
例えば、ファイナンスでもマーケティングでも、NPO活動や起業でも、何でも良いので自分が心から情熱を燃やせるものを考え抜いて見つけておくべきと思います。
アメリカのビジネススクールでは、特にネイティブのアメリカ人に見られるケースですが、社会人経験が2年未満、もしくは学部卒業から直接MBAを取りに来ている学生もいます。
社会人経験が少ないと、本当に自分がやりたいことやキャリアゴールが描けていないままMBAに来てしまい、学部生の延長のような位置づけでただ何となく科目を学んでいる、という状態です。
私から見ると、高額の学費を払っているのにもったいないな、という印象を受けていました。
入学前にしっかりとしたキャリアゴールを描くことで、自分に足りないハードスキル・ソフトスキル両方を積極的に選択・吸収することができるはずです。
キャリアゴールがまだ定まっていない方、どうやって見つければ良いか分からない方に向けて、ヒントになりそうなことをこちらの記事で書いていますので、良ければ参考にしてみて下さい。
2. 留学中にMBAのゴールデンタイムを意識し、行動する
MBA留学中の学びを最大化するためには、
- MBAの全体像を把握すること
- MBAのゴールデンタイムを意識し、行動すること
この2つが重要だと思います。
まず、MBAの全体像については、年間のおおまかなスケジュールとインターンや就職活動のポイントとなる時期を理解することが必要です。
次に、MBAのゴールデンタイムで活動の積み重ねが、2年後の大きな差を生み出します。
これら2つについては、以下の記事で詳しく書いておりますので、宜しければ目を通してみて下さい。5分程度で読めます。
内容を少し紹介しますが、MBAのゴールデンタイムとは、平日の授業が一通り終わった後の夕方17時から19時頃までのことです。
授業や打ち合わせから解放されるこの時間帯に、『自分のキャリアゴール』に直結する活動をすることこそが、MBAを本当に価値のあるものにするか否かの分かれ道だと感じています。
私自身の経験から断言できますが、MBAの慣れない環境とハードスケジュールの中でこの時間を捻出するのはかなり辛いです。
しかしそれでも自分のキャリアゴール実現のために、是非ゴールデンタイムの活動を充実させることをお勧めします。
3. 留学後、最初の職場で期待値と責任を意識し、結果を出すことを覚悟する
MBA後、最初に働くことになる職場では、即戦力として『結果』を出すことが求められます。
これは、日本人MBAホルダーの多くの場合、最低3年程度は社会人経験がありますし、実務レベルのスキルに加えてMBAでは経営における論理的思考能力を養ってきたことが前提で雇われます。
よって何が何でも結果を出す覚悟で最初の仕事に臨みましょう。
私の場合は、夏休みにアメリカで現地採用されたインターンの経験がこれに当たります。
アメリカの場合、フルタイム獲得にはインターンで良いパフォーマンスを出すことが一番の近道であるため、私はここに全力を注ぎました。
では具体的にどうすれば良いのでしょうか?
ここで、私がスクールのキャリアカウンセラーから紹介された2つの記事を紹介します。
Want to Turn Your Internship into a Full-Time Job?
7 Ways to Turn an Internship into a Full-Time Job
短い記事ですが、アメリカのインターンからフルタイムのオファー獲得にだけでなく、日本の企業でも『新しい環境』や『転職後』に成果を出そうと考えたとき、非常に参考になる記事だと思います。
なぜなら、アメリカのSummer internshipは通常夏休みの3ヶ月の期間でおこなわれるため、この短期間にいかに信頼を得て成果に繋げるか、というTipsが詰まっているからです。
少し紹介すると、
- 部門内外でのネットワーキングを心掛ける
- できる限り早い段階でたくさんの職場の人と会い、彼らの職務について知る
- 彼らも自分のバックグラウンドを知りたがっているため、エレベーターピッチを用意する
- 初期のダウンタイムを減らすため、イニシアチブを取って会社に有益な活動を探す
- 直属の上司と定期的に話す時間を取り、成果を伝える(1on1で週1回が理想)
- 上司と1on1ミーティングが難しければ、週の活動サマリーと成果をメールで週1報告
などなど、ごく一部を紹介するだけでも非常に有効であることが分かります。
私の場合、純ドメで英語がネイティブでないというディスアドバンテージがあるため、この記事を参考にインターンが始まる前から徹底的に以下を準備しました。
- ビジネススクールの卒業生でインターン先に就職している人や、企業訪問した時に知り合った社員、教授の知り合いなどありとあらゆる方法でネットワークを広げる
- インターンが始まる前に事前に得た情報から、仮説ベースでインターン先が抱えていそうな課題をいくつかリストにしておき、解決策・アプローチを考えておく
- MBAで得た実践的なスキルは事前にまとめておき、いつでもすぐに使えるようにしておく(統計ソフトやExcelのテンプレートなど)
これらを駆使して3か月間インターンに取り組んだ結果、運良くポジションに空きが出たこともあり、フルタイムのオファーを頂くことができました。
上記はあくまでも一例かと思いますが、それぞれご自分の得た情報で徹底的に『事前準備』することが、新しい環境で早期に成果を出すために非常に重要だと思います。
最後に
ここまでMBA後のキャリアの選択肢や、留学前~留学後の各段階でのキャリアアップのポイントについて書いてきました。
どのステージも決して楽な道ではないと思います。
辛いときにどれだけ踏ん張れるかは、やはり『本当に好きなことに向かって進めているか?』だと思います。
最後に紹介する動画は、トヨタ社長の豊田章男氏が母校のBabson大学の卒業式でスピーチした時の様子です。
『つまらない人間になるのではなく、楽しみましょう。幸せな人生には何が必要か。喜びをもたらすものは何なのか。自分自身で見つけ出すことが大切です。』
(source: Babson College YouTube Channel)
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